16mmスタンダード版にて上映、タイトル・クレジットが欠落している状態での鑑賞。そのためjmdbでは上映時間が80分だが、チラシでは76分に短縮されている。

産婦人科医が朝帰りをして寝室に赴くと、妻が殺害されていた。病院に勤めるびっこの看護婦は、死亡診断書を書きましょう、先生なら大丈夫と言うが、夫は警察に電話をする。現場調査の後、二人はアリバイを求められるが、医師は口を割ろうとしないが、看護婦は「昨晩は先生は私のアパートにいました。」と証言する。その後医師と看護婦は重要参考人として連行され、取り調べを受ける。ここからやや羅生門形式で彼らの独白をもとに過去の再現シーンが挿入されていく流れ。夫は妻の不義を知っていたと告白すれば、その成り行きのシーンが展開される、といった風。ここで、謎の探偵(その正体は詐欺師)に連れられ、妻の情事の現場を夫は目撃することになる。モーテルの押入れの壁がマジックミラーになっていてそこから覗くという無茶な設定なのだが、それ以上に夫の心理状態が怒りから、それを見ることへの執着へと変遷していく様は回想を越えたところにあると思われる。

そして、情事の相手の学生を取り押さえられて、確かに殺害時の晩、医師の家を訪れたがその時には死んでいたと告白する。

妻亡き夫に対し看護婦は、彼にすり寄り、関係をもつことになる。何故か看護婦は夫にも情事があったこと、妻の情事のことも把握しており(ほんとに何で?)、ああ、この看護婦が手玉にとっていく展開なのだと思ったら、実は妻殺しの犯人は看護婦であり、アリバイ工作のためにテープレコーダーを用意しており、強姦殺害に見せかけるために、AB型の医師ではなく、情事の相手の学生の血液型O型の男を使って精液を採取して、殺害後妻の膣内にそれを挿入していたのだった。この件が警察の捜査で次々と証拠として挙げられて(この話では刑事達はなかなか優秀な人材として描かれていると思う)、看護婦は追いつめられる。全ての内幕を知っている看護婦は堂々と言い放つ「私は先生を愛していました。先生をお調べになったらいろいろ出てきますよ(うろ覚え)」。開き直ったかのような表情と、虚空を見つめる視線はあきらめでは無く、むしろ堂々としており、罪悪感を示さないところに空恐ろしさを感じた。

「成人映画」というくくりだが、情事の場面はあるも陰影の強いシーンで施されており、また、妻と学生の情事は明るくても、決して乳房すら見せないあたり、時代の限界だったのかもしれないが(ただ湯上りのタオルを巻いた姿は確かにエロティック)、瑣末な問題であるかと思うくらいに推理ドラマとして充実しているところが悦に入った。時折挿入される扇風機、フラッシュをたかれたようなシーンまど、暗喩に満ちたシーンなど、湿度の高い人間模様がえげつなく暴露されていく展開は、まさに歪んでいる。一番の役どころの看護婦の、潔癖であるように見せかけて、内面に踏み込んだときの女の恐さが痛ましい。

扭曲关系歪んだ関係(1965)

又名:Yuganda kankei / Perverse Relations

上映日期:1965

主演:新高惠子 Saburo Shiroyama 

导演:若松孝二 /